大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和31年(う)276号 判決

録に依れば原判決は挙示の各証拠を綜合し、「被告人は日本専売公社の指定したたばこ小売人でないのに、第一、昭和二十九年三月頃より昭和三十一年二月頃迄の間、前後百回余に亘り、富山市総曲輪九十五番地株式会社フジ商会フジ遊戯場に於て、木本鉄二及び村田京史に対し、前記公社の製造たばこ光十本入等合計七万五千八百六十六個を、一個二十五円乃至二十七円位で、合計金百九十九万四千五百三十一円位で販売し、第二、昭和三十一年二月十三日頃肩書自宅に於て、販売の目的で前記公社の製造たばこ光十本入四百六十四個、ピース十本入十個、パール十本入二十個、新生二十本入七個を所持し、以て販売の準備をしたものである。」旨の事実を認定し、右第一事実を包括一罪と認定する旨の註釈を附した上、前記第一、第二の各事実に対し、たばこ専売法第二十九条第二項第七十一条第五号を適用し所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるとし、同法第四十七条、第十条、第二十五条等に従い、被告人に対し懲役拾月(参年間執行猶予)の刑を言渡したものであることを認め得べく、他方、記録中に編綴されている検察事務官作成の被告人の前科調書の記載を検討すれば、被告人は(一)昭和二十九年五月十四日富山簡易裁判所に於て傷害罪に依り罰金五千円(同年六月三日確定)に、(二)同年七月三十日同裁判所に於て道路交通取締法違反罪に依り科料五百円(同年八月十四日確定)に、(三)昭和三十年四月十九日同裁判所に於て覚せい剤取締法違反罪に依り罰金二万円(同年五月七日確定)に、各処せられたものであることを認め得る。弁護人は「叙上のような確定判決が存在するにも拘らず、原判示第一事実を包括一罪と認定し、被告人に対し、一個の主文を以て科刑した原判決は、結局に於て、事実を誤認し、且、法令の適用を誤つたものである。」旨主張するので、その当否を審究するに、これを原審証拠調の結果に徴すれば、被告人の前掲第一の所為は、畢竟するに無資格者が、営利の目的を追及するため、一定期間内に反覆累行した、多数且同種の行為の集合体であり、所謂営業的犯罪行為の範疇に属すべきものと認め得るから、これを目するに包括一罪を以てした原審の事実認定は、必ずしも、罪となるべき事実の個数を誤認したものでないと考えられるけれども、しかしながら、犯罪の個数如何の問題はさておき、併合罪に関する刑法の規定に依れば、例えば叙上の営業犯のような、「各独立して犯罪を構成するに足る多数行為の集合に依る一個の包括的犯罪行為」の進行中に、偶々当該犯人に於て何等かの裁判の言渡を受け、叙上包括的犯罪の終了前、右裁判の確定を見るに至つたような場合には、該裁判確定の時を標準として、包括的犯罪行為を前後に両分し、裁判確定前に行われた部分と確定裁判を経由した犯罪とを以て、刑法第四十五条後段所定の併合罪とし、その後に成立した部分を然らずとし、以上の各部分を科刑上別個に取扱うべきであると解するのを相当とし、これを一般の犯罪(例えば毒物の郵送を手段とする殺人罪であつて、その着手後終了前に確定裁判の介入があつたような場合)に於ける如く、当該犯罪終了の時を標準とし、犯罪終了の時が裁判確定の時よりも後であるの一事に依り、該犯罪行為の全体を以て、前記確定裁判に依る罪と、全く併合罪の関係に立たないもののように解釈すべきではないと考える。そうして見れば、前掲第一の罪の成立の過程中、叙上の如く三個の確定判決の介在することが明瞭であるにも拘らず、これ等各裁判の確定前成立した犯罪行為と、確定判決を経由した犯罪行為との間に、刑法第四十五条後段所定の併合罪関係の成立を認めず、従つて同法条を適用しなかつた原判決は、これを要するに刑法第四十五条の解釈適用を誤つたものと言うの外なく、その誤りは判決に影響するから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れないものである。

(裁判長判事 高城運七 判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫)

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